Hunting 猟記

猟日誌11「ヤマドリ(エゾライチョウ)コールを作ってヤマドリ猟をする話」

 また久々の更新となってしまいました。最近は雪もちらつき始め、車に積もるようになりました。この根雪になる前が一番寒いような気がします。タイトルのヤマドリというのは、ライチョウの亜種であるエゾライチョウのことを指しており、本州のヤマドリとは別です。北海道の猟師さんはエゾライチョウのことをヤマドリと言うんですよね。今回はいつもの猟日誌に加えて、山歩きの楽しさについても少し触れてみました。

ヤマドリコールを作る

 先日、シカを探しに山に入った際に「フィ~・・・フィ~・・」とか細い口笛のような声で鳴く鳥に出会いました。2~3か所で同時に鳴いており、かなり近くから聞こえます。鳴き声の正体が気になり双眼鏡を覗くと、その正体はエゾライチョウでした。エゾライチョウは北海道の猟師たちにヤマドリと呼ばれ、近年数を減らしている狩猟鳥獣です。

 その日の午後、師匠と電話する機会があったのでその話をすると「昔は5円玉で笛を作ってよくコール猟をしていた」と教えてくれました。そんな話を聞いてしまったら、もうチャレンジするしかありません。早速、笛の作製に取り掛かります。

5円玉って意外と財布にないですよね

 まず、5円玉を2枚用意し、隙間を開けてテープを巻いていきます。

指で押しつぶしてしまいそう

 一周巻いたら完成です。え?これだけ!?そう、これだけです。

 五円玉と五円玉の間隔を広くしたり狭くしたりすることで音の高さを変えることが出来ます。ピーピー吹きながら自分の望み通りの音域に設定しましょう。

完成した笛

11月22日(火)

日付11月22日(火)
日の出6:35-16:06
気温2℃
天気曇り時々雨
出発時刻6:30
猟果なし

 この日は生憎の天気で、風が冷たく霜が降り、笹藪を漕ぐのがしんどい朝です。山の尾根線にアプローチするため、林道を歩いて上りやすい場所を探します。朝の空気を吸いながらぶらぶらと歩いていると…。

ガサッ!!

どこに何がいるかわかりますか?僕は写真を撮ったはいいものの後で見つけるのが大変でした

 林道脇ののり面からシカが出てきました。僕が今入っている林道は猟圧が高くシカがスレているので、滅多に林道脇で見ることはありません。珍しいですね。

たしかここらへんに居たはず...

 しかもメスです。ここ最近はオスばかり出会っていたので、久々のメスに心が躍りましたが今日はエアライフルを担いでいるのでそのままお別れしました。

 沢を渡って笹をつかみながら斜面を登り、先日エゾライチョウの鳴き声を聞いた場所まで登ってきました。このあたりはシカの利用頻度が高いのか、稚樹が少なくエゾユズリハフッキソウが目立ちます。トドマツ林だから日が当たりにくいってのもあるのかも?早速ヤマドリコールを吹いてみましょう。

フィーーフィッフィッーー・・・

フィーーフィッフィッーー・・・

 エゾライチョウの鳴き声を思い出しながら、出来る限り近くなるように吹きます。これが結構難しくて、吹いて音を出すもよし、吸って音を出すもよし、自分の口の中から聞こえる音が実際どのくらい似ているのかを確かめながら試していきます。

 折り畳み椅子に座りフィーフィー吹いては辺りを眺め、お茶を飲んで一息ついてみたいなことを繰り返していると、頭上にエナガの群れがやってきます。エナガも毛がホワホワでよくお土産で売っているシマエナガ人形にそっくりになってきましたね。

 ふと顔を上げると、視界の隅に違和感を覚えます。

どこに何がいるかわかりますか?

 わかりましたか?

我々がシカを覗くとき、シカもまた我々を覗いて...

 ヤツです。さっきまでは確実に居なかったのに、音もなく現れました。ラッティングコールと聞き間違えたのでしょうか。もう北海道は繫殖期も終わり際で、山でラッティングコールを聞く機会もだいぶ減りましたね。ずーっとこっちを見ているので、双眼鏡で覗いてやりましょう。

マヌケ面ですね~

 おそらくこちらを鮮明にみる事は出来ていないと思いますが、ぬぼーんとした顔でこっちを見つめています。距離は50mから100mの間でしょうかね。トライポッドもあるので安定した依託射撃もできるのですが、今日持ってきているのはエアライフル。

 いや~、エアライフルを持って山に入るとシカに会いますし、ハーフライフルをもって山に入るとヒヨドリやエゾライチョウに会うんですよね。猟欲センサーとでも言うのでしょうか、完全に働いてますね。

 5分程見つめあった後、シカは静かに姿を消しました。今回のメインターゲットであるヤマドリは最後まで姿を現しませんでしたが、良い経験が出来たのでヨシとしましょう。

山を歩くのは楽しいという話

 ここからは猟日誌と関係のない番外編です。僕は最近地形図とにらめっこして猟のルートを決めるようになりました。地図を読む、斜面を登る、痕跡を見る、そういった技術のレベルアップも兼ねていますが、なによりも「山を歩く」というのはとても楽しいことに改めて気が付いたのです。

雪に埋まるエノキタケ

 山へ一歩入ると、そこが人工林だろうと天然林だろうと、人間の土俵ではないということを強く自覚します。土砂崩れ、倒木、滑落、大雨、ヒグマ、自然や偶然を相手にしたとき、自分がいかに無力か、そんなことを考えさせられます。僕は銃を背負っていますが、その銃だってただの飛び道具で万能ではありません。

新鮮なクマの爪痕

 楽しいと言っておきながらマイナスなことばかり書いていますね。でも本当に楽しいんです。自分は山に入れば本当にちっぽけな存在で、道具に頼らなければきっとシカにも勝てません。そんなちっぽけな自分を自覚すると、不思議と「あぁ、結局人間も自然の一部なんだなぁ」という気持ちがこみ上げてきます。この気持ちの変化こそが、僕にとっては非日常であり、楽しく満ち足りた気分になります。

ムラサキシメジの美しさが際立つ

 もちろん物理的な楽しさもあります。ありとあらゆる生物の存在を間近に感じ、道なき道を進んだ先にどんな景色が広がっているのか、冒険心がくすぐられます。ムラサキシメジやヤマブドウ、サルナシやエノキタケ、こういった山の恵の周囲の環境や生え方を調べ、自分の経験データベースに情報が蓄積されるのもとても楽しいんですよね。

 まだ経験していない山の怖さ、自然の怖さもあると思いますが、良い事悪い事含め、これから色々な事を体験していくと思うとワクワクドキドキが止まらない僕でした。

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