銃と猟具

むっちりーの七つ道具その一「ソフトループ」

 皆さんこんにちは。遂に始まりました「むっちりーの七つ道具シリーズ」。このシリーズは、普段の猟で欠かすことができない、いや、欠かしても大丈夫だけど無いと一気にテンションが下がるモノを紹介していくシリーズです。猟のマストアイテムがナイフ鹿笛だとするならば、これから紹介していく道具は“準マストアイテム”となります。基本的に重要度が高いもの順で、紹介していきます。

重要度No.1「ソフトループ(タイダウンストラップ)」

 堂々の第一位、むっちりーのにとって何よりも重要なアイテム。それが「ソフトループ」です。本来の使い方は、トラックの荷台にバイクやモービルを固定するときに、対象物が傷つかないように“掛け位置”を作るための道具です。タイダウンベルト(ラッシングベルト)等と一緒に使います。

 何に使うのかというと、みなさんお察しの通り、シカを引っ張る時や吊り上げる時の基点として使います。また、車等を使って引っ張り方向を変えなければならない時、スナッチブロックや滑車を木に設置すると思うのですが、そういった時のベルトとしても使うことができます。

 今まで色々な道具を試してきましたが、最初から最後まで使い続けられたのはこのソフトループでした。また、安く・強く・入手しやすいの3拍子が揃っているので、無くて困る!あって邪魔にならない!応用も効く!そんな素晴らしいアイテムです。ただ、「獲物を撃っても回収しないよ」っていう人にとっては、あまり魅力ないアイテムかもしれません。以下、詳しい使い方を解説していきます。

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用途1.獲物を引っ張る時の持ち手にする

 普段から獲物を引っ張っている方は共感いただけると思いますが、獲物を引っ張る時、持ち手の有無はとっても重要です。対象がヒグマであろうとエゾシカであろうと、持ち手がなければなかなか引っ張れません。これは、引っ張るための筋力と同時に握力も消費するためです。シカの足はまだ細いため握りやすいですがクマとなると、なおのこと引っ張りにくいです。逆に、持ち手さえあれば100kgの個体でも1人で引っ張ることができますし、斜面を引き上げることすらできます。

2秒で装着可能

 このソフトループを両足にかけてあげることで、手を“ひっかけられる”ようになりますし、足をそのまま握ったときと比べて、握力を消費しづらくなります。

 ちなみに、むっちりーのは獲物の後ろ足にソフトループをかける派です。よく、毛の流れに逆らわない方が引っ張りやすい(後ろ足ではなく前足や首に持ち手を作る)という意見を聞きますが、前足にソフトループをかけて引っ張ると、頭がプラプラと鬱陶しいです。首に道具をかけるならば良いとは思いますが。丸太を超えたり、笹薮を突き抜けたり、岩場だったり、ありとあらゆるロケーションで獲物を引っ張ってきた僕としては、後ろ足に持ち手を作った方が上手く事が進みます。

用途2.吊り上げるためのアイをつくる

 そして、引っ張ってきた獲物をどうするか、「引っ張る」の次は「積む」という作業が待っていますよね。もちろん、荷台にスロープをかけてそのまま引っ張り上げることもできますが、僕はピックアップトラックにクレーンを付けているので、「吊る」という作業が出てきます。

 そこで、後ろ足にそれぞれ1本ずつかけていたソフトループを外し、後ろ足2本を1本のソフトループで、前足2本を1本のソフトループでそれぞれまとめ、クレーンフックに後ろ足のループと前足のループを通します。そうすることで、高い位置までしっかりと吊り上げることができます。

ハイラックスが小さく見えるほど大きなシカ

 また、吊り上げて解体する際にもソフトループを使用します。本当は、解体用ハンガーを使った方がいいのですが、知り合いに格安で売ってしまったため、この1年間ずっとソフトループを使って解体を行っています。

年間60頭程このスタイルで捌く

用途3.道具をかけるための基点にする

 上述の「アイを作る」に被るところはありますが、獲物を引き上げるために、木や車に滑車をつける。そんなときも、ソフトループを使います。

 ただ、ソフトループはあくまでアイ(穴)を作るだけなので、穴と穴を繋ぐにはカラビナやシャックル等の道具がなくてはなりません。むっちりーのは基本的に耐荷重200kgのステンカラビナを使用しています。

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ソフトループを使うメリット

雑に使える

 価格も安く、かつ耐候性も高く、もちろん耐久性も高いので、ありとあらゆる場面で手軽に使うことができます。僕は「道具は使ってなんぼ。気を遣わずに使いたい」という考えなので、安くて耐久性があるものは大好きですし、高くて耐久性があるものには絶大な信頼を寄せます。

スコップホルダーは結束バンドで止めている

 普段は、スコップホルダーに5~6本かけて、使うときにここからペッと持っていくスタイルでやっています。というわけで、1年365日雨風雪泥血に曝されていますが、未だに2年前に買ったものを使い続けています。もう少ししたらちぎれるだろうな~ってやつがありますが、それでもなかなか切れないので、まだ新調していません。

場所を取らない

 上述したように、収納するときも場所を取らないですし、小さく軽いので、使うときはポケットに入れていくこともあります。取り出しやすく運びやすく使いやすい、こういった道具が猟場で扱う基本的な道具になってくるかと思います。

引っ張り基点の位置が高い

 「引っ張り基点の位置が高い」というのはどういうことかというと、シンプルに持ち手の位置を高くできるので、腰への負担が少なくなります。また、持ち手が獲物に近いため、上に引き上げることも容易で、大きな石や倒木を乗り越えるときも乗り越えやすいように思います。

 このあたりは完全に個人の好みで、そもそも獲物に対して体を後ろ向きにするか(広背筋で引っ張る)、獲物に対して背を向けて正面を向くか(大腿筋で引っ張る)、人によって得手不得手があるので、一概にどれがイイとは言えません。

他のハンターはどうしているのか

 そもそも、獲物を回収する人というのが全体的に見て少数派です。我が猟友会でも、回収能力のあるハンターというのは全体の半分もいません。むっちりーのは食肉処理施設へ搬入しているため、回収系ハンターと会って話す機会は多いのですが、引っ張る方法は、ロープを獲物にかけて引っ張ったり、ソリに獲物を載せて引っ張り出している方が多いような印象です。

専用のスリングを使う又は作る

 それなりに回収系ハンターと繋がりのあるむっちりーのでも、ソフトループを多用しているハンターには会ったことがないです。小道具すぎてしまわれていたり、目に付かないだけかもしれませんが、むっちりーのスタイルではありとあらゆる場面で目にするのでシンプルに使ってる人が少ないと言う結論に至ってもいいかと思っています。

 じゃあ他のハンターは引っ張る時どうしているのか、下の図のような手作りスリングを使っているハンターはそれなりに見かけます。

 作り方は簡単で、ポリエステルロープなどでアイを作り、持ち手に塩ビ管などを通すだけです。持ち手に塩ビ管やホースを通すのは、引っ張って負荷がかかったときにロープが手に食い込むのを防ぐためです。市販でも同じようなものが売っているので、回収といえばこの形の道具が主流なのかもしれません。

 実際に使ってみると、平坦な場所ではソフトループよりも楽に獲物を引っ張ることができます。腰への負担も少ないです。

ソリを使う

 言わずもがな、ソリを使う人は多いですよね。むっちりーのも今までに4台のソリを使ってきています。そして常に荷台に積んでいます。7つ道具の中にはソリも入っています。ただ、実際猟をやっていて、ソリを使って引っ張る場面はそれほど多くありません。畑や平坦な場所で倒したら使いますが、崖を登ってとか、谷を降りてとか、両手が塞がったら困るような状況が多いので、わざわざでかくて邪魔なソリを持ち運ぶ気にならないのです。いや、使うんですけどね。特に冬は。

お気に入りのジェットスレッド

 折り畳み式のソリというのもありますが、まだ使ったことはありません。雪山で忍びで獲って、捌いた肉を載せてくるとかならまだ有用かなと思いますが、エゾシカは軽くても50kg、大体獲るシカが70kg前後であることを踏まえると、忍びで獲って獲物まるまる70kgを引っ張り続ける気にはなれません。

まとめ

 正直、回収系のハンターの多さは道東圏、道央圏、オホーツク圏の方が多いので、そういった地域のハンターさん達がどんな道具を使っているかは、まだまだ情報収集していく必要がありますね。ただ、急こう配が多く、笹も濃く倒木も多いこの地域で、回収系ハンターとして地域の年間駆除枠の7割を埋めているむっちりーのがオススメするのですから、良い道具であることは間違いなしです!

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