今回は賃貸住宅に住んでいる方の大きな壁、「銃砲、刀剣類の持ち込み禁止」について書いていきたいと思います。よろしくお願いします。
目次
賃貸のアパートでも銃の保管はできる
結論から申し上げますと、アパート等の賃貸物件でも銃の保管は出来ます。
僕自身、賃貸契約の2階建てアパートに住んでおり、無事警察の立ち入り検査も身辺調査も乗り越え猟銃の所持ができています。僕の場合は賃貸契約を行っている管理会社に事前に確認をとって所持手続きを行いましたが、同時期に銃の所持手続きを始めた知人Sは管理会社に内緒で銃を所持しています。今回は僕と知人の2つの実例を紹介していきたいと思います。
賃貸物件での銃の保管は禁止されているのか
そもそも賃貸住宅での銃の保管は禁止されていません。むしろ銃砲刀剣類所持等取締法には自ら保管するよう記載されています。
第四条又は第六条の規定による許可を受けた者は、次条、第十条の八又は第十条の八の二の規定により保管の委託をする場合その他正当な理由がある場合を除き、許可に係る銃砲等を自ら保管しなければならない。
銃砲刀剣類所持等取締法 第十条の四第1項
しかし、法律では禁止されていませんが多くの場合管理会社と個人間の契約で禁止されています。「いやいや、自分が借りるときはそんなこと言われていないよ。」という方は"住宅賃貸借契約書"を確認してみてください。
※大家さんと直接契約を結んでいる場合は禁止されていないかもしれませんが、契約書の内容はテンプレートとして大部分が共通している可能性があります。
僕の場合、管理会社との契約条項第8条3に以下の記述があります。
「乙(契約者)は、本物件の使用にあたり、次の次号に掲げる行為及びこれらに準じる近隣に迷惑をかける一切 の行為を行ってはならない。」
「一 鉄砲、刀剣類又は爆発性、発火性を有する危険な物品等を製造又は保管すること」
あくまで、管理会社(大家さん含む)との契約なので、違反したからといって警察にどうこうされることはないと思いますが、管理会社によっては罰金や立ち退きを命じられる可能性は十分にあります。
僕が管理会社から許可をもらうまで
僕のアパートは大家さんが物件を所有しており、管理会社に管理を委託する、ごく一般的なアパート事情です。僕は最終的に管理会社から銃所持の許可をもらいましたが、何も特別なことはしていません。管理会社へ出向き事情を説明しただけです。
具体的な手順
- 説明資料を準備する
- 管理会社を訪ねる
- 銃所持の旨を伝える
- 結果は会社次第
まず管理会社へ行く前に説明に用いる資料を準備します。賃貸契約書や狩猟免状、僕の場合は鳥獣管理士の資格も所持しているので念のため鳥獣管理士カードも持っていきました。ここで重要なのは「自分が怪しいものではない」ということを証明することです。また賃貸契約書は必ず忘れないようにしましょう。おそらく窓口で対応する職員さんはそもそも銃の保管が禁止されているという事実を知りません。話を円滑に行うためにも契約書の文面を見せる事は重要です。
資料が準備できたら管理会社を訪ねますが、アポをとるときに「銃の事で話がある」と言わずに「契約書の内容について聞きたいことがある」くらいではぐらかしておきましょう。銃と聞いただけで「なんだか面倒くさそうだな」と思われてしまい対応してもらえない可能性があります。大前提として意識したいのは、「交渉以前に既に契約によって禁止されている」という点です。
ここからが本番です。繰り返しになりますが、窓口で対応してくれる職員さんは銃の保管が契約で禁止されているということを知らない可能性が高いです。まずは契約書の文面を見せ、「禁止事項に銃の保管の禁止とあるが、許可してもらうことはできないか」と尋ねましょう。あわせて、自分は公式な資格を所持していること、危険な人物ではないことを説明しましょう(これがかなり重要)。おそらくこの時点で、窓口で対応してくれた方から上の立場の人物へ話が通り、再度銃を所持したい旨を話すことになるでしょう。事情を説明する際に公安委員会の身辺調査が入ることも付け加えておくと「キッチリカッチリやっている感」が出てプラスになるかもしれません。
肝心の結果ですが、これはもう管理会社次第としか言いようがありません。僕の場合は「そもそもこれらの禁止項目(銃や刀剣の保管禁止)については、暴力団等の危険な集団の構成員による物件の利用を制限するためのもので、狩猟者を想定していません。今回のような事情でしたら、書面での許可はできませんが、内密にしてくだされば銃を所持保管していただいて構いません。」との回答いただくことができました。
書面での許可が出せないというのは、管理会社の総意として許可をするわけではなく、あくまで現場責任者の立場から個人的に許可をするという大人の事情があるのでしょう。なにはともあれ、僕はこれで「管理会社からの許可」という重要そうに見えてそうでもない(※)カードを手にしたわけです。
※「管理会社からの許可」といっても、それを証明するものは一切ありません。つまりこの許可自体になんの効力もありません。許可を得ているからといってあからさまに銃を持ち歩いて、近隣住民に通報された場合、「契約書で禁止されている行為を行っている」という理由で僕が圧倒的に不利になるのは言わずもがなです。
近隣住民への聞き込みはどう対応すればいいのか
ぶっちゃけた話、公安委員会の「銃の所持手続き」において、賃貸契約書で銃の保管が禁止されていようと、されていまいと銃の所持許可申請上たいした問題ではないのです。では、なぜこんなにも賃貸での銃所持問題に関心が集まっているのか。もちろん「契約で禁止されているから」というのも理由の一つだと思いますが、多くの人は「近隣住民への聞き込みをどうクリアすればいいのか」の答えを探しているのではないでしょうか。
僕の場合、事前に生活安全課の担当者に「管理会社に内密に手続きするように言われているので近隣住民への聞き込みを控えていただくことはできますか?」と交渉することで近隣住民への聞き込みを回避することができました。もちろん身辺調査自体がなくなったわけではありません。調査の対象を「同じアパートの住民」から「近くに住む知人」に変更してもらっただけです。
そもそも、「近隣住民への聞き込み」の目的は、捜査の対象者がどんな人物か判断することです。加えて「近隣住民」は物理的に調査対象者の身近にいるため、周辺の治安や生活環境の判断の基準になります。しかし、これは必ずしも同じアパートの住民である必要はありません。向かいのアパートの人や、隣の一軒家の主人など、普段よく挨拶を交わす相手や自分のことを知っている人物が近くにいるならその方でも問題ないわけです。
なので、例え管理会社に無断で手続きしたとしても「同じアパートの人は生活時間帯がズレているため軽い挨拶しかしたことありません。ただ向かいの〇〇さんは週に2~3回犬の散歩に合わせて立ち話をしています。」と警察に伝えることで、聞き込み対象を変えられる可能性は十分にあるのです。また、近隣住民と過去にトラブルがあった場合正直に「〇月頃にごみの捨て方で〇〇号室の〇〇さんと軽い口論になりました。」と伝えておいた方が無難です。過去にトラブルがあった相手に聞き込みをしても、得られる情報が正確でない可能性が高いため聞き込み先を変更してもらえる可能性があります。
ロッカー類の設置はまた別の話
賃貸物件で銃を保管することのもう一つの弊害として「壁や床にガンロッカーや装弾ロッカーを固定ができない」という問題があります。僕の場合、先住者が既に壁を穴だらけにしていましたので問答無用で壁にビス止めさせてもらいましたが、都内のおしゃれアパートではそうはいきません。しかし、ガンロッカー問題や装弾ロッカー問題は、諸先輩方により「重りを20㎏以上入れる」「柱を立てて柱に固定する」等解決策が導き出されています。僕の場合ガンロッカーは壁に固定しましたが、装弾ロッカーは隣の部屋の本棚に固定し無事立ち入り検査をクリアしました。
管理会社に無断で銃を所持した知人の話
僕には一緒に狩猟免許を取得し、ほぼ同時期に猟銃の所持手続きを始めた知人Sがいますが、Sも言わずもがな賃貸契約書にて銃の保管が禁止されていました。しかし管理会社に何も言わずに警察の身辺調査を乗り切っています。また近隣住民の聞き込みも、同じアパートの住人から近隣に住む同僚への聞き込みに変更してもらっています(実際にアパートの住人とは全く関りがない)。
管理会社へ無断で銃を所持することが良いか悪いかは別の話です。あくまで事例の紹介であって最終的な判断は個人の倫理観によります。
実はみんな意外と・・・
「赤信号みんなで渡れば怖くない」ではありませんが、現実として賃貸住宅に住みながら銃を所持している人は数えきれないほど居ると思います。そもそも赤信号になっていることに気付かずに青信号のつもりで渡っている人がほとんどだと思います。シカを年間100頭駆除するこの道50年のベテランハンターさんも市営住宅に住んでいますし、社宅や民間アパートで銃を所持している知り合いは何人もいます。
重要なのは周囲の人への思いやり
人を思いやる気持ちは日常生活においても大事だとは思いますが、銃の所持においては「思いやりの精神」はとくに重要だと思います。
近隣住民の立場になって考えてみてください。近所の人があからさまに銃とわかるものを背負っていたら、例えそれがモデルガンだとしても、エアソフトガンだとしても怖いですよね。いきなり家に警察が来て、普段挨拶もしない無口で愛想のない隣人が「実銃を所持する」と聞いたら警戒しますよね。銃を所持する保管するという行為は一般の方には理解し難い行為です。もし周囲に公になれば、たとえ管理会社に銃保管の許可を得ていたとしても過剰な反発を受けるかもしれません。
※近隣住民へ不安を与えないために管理会社や近隣住民に隠れて手続きを行えという意味ではありません。普段の生活から良好な関係づくりを意識したいですねという趣旨の記述です。
管理会社から銃保管の許可を得ていようと得ていまいと、銃はケースに入れできるだけ銃とわからないように持ち運びましょう。防犯上も大事ですが、何より近隣住民の不安を煽らないことが重要です。おすすめはギターケースです。実際に射撃場でもギターケースに入れて持ち運びしている人を目撃したことがありますし、ハードオフやセカンドストリートに行くと1000円前後でに入るためコスパが良いです。
自分も周囲の人もなるべく不快にならずに皆ハッピーで過ごせるように、思いやりを大事にして過ごしたいですね。