Guns & Gears 猟具と道具

狩猟用ナイフを考える。現在使用している刃物類と新たに購入したナイフ

 皆さんこんにちは。今回のテーマは「ナイフ」です。一部ハサミや鋸も混ざっていますが。ナイフといっても、構造から素材、片刃両刃など語るとどこまでも深く掘り下がってしまうので、今回はあくまで僕が使用しているナイフの紹介と、「放血用」に一本追加購入したので、その選定基準と候補に挙がったナイフ、そして実際購入したナイフのレビューをしていきたいと思います。

※銃刀法の話などはもはや記述するまでもないので割愛します。ナイフの屋外持ち出しに不安が残る方は「銃刀法 ナイフ」と検索してみてください。

第一線で活躍するナイフ(刃物)たち

 私が現在所持している狩猟用の刃物は計7本です。といっても猟場にもっていくのはそのうち数本で、ほとんどは用途が限定的な刃物です。

1.これ一本ですべて解決「Browning Hunter Combo.」

二本収納できるシース付き

 ザ・オールマイティ。こちらのナイフは、ブローニング社のハンターコンボという商品で、ガットフック(皮裂き)のついたフルタング構造※のスキナーナイフと、コンパクトなフォールディング(二つ折りになる)ナイフがセットになっています。もしまだ一本もナイフを持っていないという方がいましたら、ひとまずこれを買えば大体の用途、数多くのシーンで活躍してくれる一品です。もらいものなので値段はわかりませんが約3千円程です。

 ただ、2022年11月現在、Amazonでの取り扱いはなく、「ブローニング ハンターコンボ」と検索すると数件のみ取り扱いが確認できます。もしかすると既に生産終了しているかもしれません。

※フルタングナイフとは持ち手から刃先まで一枚の板かつ持ち手が挟み込まれているナイフを指します。

2.背ロースや素早い皮剥ぎに「ライトエッジ スキナー ガットフック付」

グリップの穴に指を通せるのが便利

 このナイフは主に背ロースを綺麗に骨からはがしたいとき皮を何かに利用したいときに使っています。刃先がとがっていないので皮を突き破ることがなく、肉にも傷をつけにくいです。普通のナイフでも扱い方次第では十分丁寧な仕事はできるのですが、このナイフは冬場の外の解体時や手がかじかんで指に力が入らない時でもスピーディーかつハイクオリティな仕事ができるので一本あると便利です。たしか僕は2000円以下で購入しました。

3.中型動物の解体やシカのあばらに最適「剪定ばさみ」

3年以上使っているのでさびが目立つ

 これは何気にだいぶ長い事使っています。普段持ち歩くことはないですが、常に車に積まれています。アライグマを解体するときは、股関節をこれでバチンと切りますし、シカのアバラを食べやすいサイズに切るときもサクサク切ることができます。実はハサミの結合部分を外すと、片側が片刃のスキナーナイフとしても使えるので意外と汎用性は高いです。こちはホームセンターにて1000円程度で売っていると思います。

4.シカの股関節アバラ要員「糸鋸」

 これは別に糸鋸である必要はないんですが、たまたま家にあった糸鋸をそのまま解体にも使っているという次第です。写真を撮ったのですが、毛や肉片が付いたりしてあまりにも衛生的でないので控えました。用途としては、シカの肛門処理をする際に股関節を切ったり、内臓を取り出すときにアバラを切断したりします。また。背骨や頸椎なんかも簡単に切断できるので処分場へ搬入するときに役立ちます。こちらもホームセンターにて1000円以下で買えるのではないでしょうか。

5.ブッシュの刈り払いに「マキリ」

鞘と共にホームセンターで購入

 これは僕が仕事に就く前に、とりあえず腰に一本刃物が欲しいということで、ホームセンターに行ったところ「マキリ」という名称で売られていた片刃の刃物です。値段はたしか2400円くらいで、だいぶ荒い使い方をしてきました。今回新しく購入するナイフはこれの代わりに使うもので、このマキリ君には一旦第一線から退いてもらおうかと思います。個人的には片刃の刃物は結構好きなのですが。やはり屋外でオールマイティに使うには両刃の方が使い勝手がいいと個人的には思います。あとは持ち手が木製なので、どうしても衛生的な解体ができません。

6.お守り要員「肥後守」

持ち手に水滴がついているような加工が魅力

 こちらのナイフは第一線で活躍というよりは肌身離さず持っているナイフといった方が正しいかもしれません。もちろん、何かを切るということもありますが基本的には他のナイフを使います。この肥後守は相棒とおそろいで、持ち手に雫のような加工が施されているところがとても気に入ってます。ただ、使う場合が少ないと言ってもいつでも使えるように研いで脂をぬってあるので、切れ味はピカイチです。

今回新規購入するのは「放血用」ナイフ

 さて、解体に用いるナイフや道具は十分そろっているので正直これ以上ナイフを増やす予定はなかったのですが、シカの放血が確実に行える刃物がマキリしかなく、さらには片刃で普段の用途と相性が悪いということで新たにナイフを購入することとしました。

放血用ナイフに求める条件「刃渡り」

 まず前提として、心臓付近の頸動脈にアプローチして血抜きを行う場合、ある程度の刃渡りが必要です。個体サイズによりますが、100㎏を超えるような大型のオスジカの場合、刃渡り13cmは欲しいところです。今回新規で購入するナイフもできるだけ刀身が長いものをピックアップしています。

放血用ナイフに求める条件「フルタング構造」

 必ずしもフルタングである必要はありませんが、心理的にフルタングの方が信頼できるのでフルタングのものをピックアップしています。「刺して裂く」というシンプルな動作が行えればいいだけなので、力を目一杯かけても人力じゃ絶対に壊れることのない構造の方が安心しますよね。

放血用ナイフに求める条件「清潔さ」

 個人でシカを自家消費するだけであれば、衛生面や材質を気にかける必要はあまりないかもしれませんが、僕は食肉処理施設へシカを搬入するので、ルール上衛生的なナイフを用いる必要があります。カッコイイ痺れるナイフなら、持ち手がシカの角であったり、綺麗な木目の入った木製であったりした方が好みなのですが、施設へ搬入する以上責任が伴うので、樹脂または金属のハンドル(一部木製あり)のものをピックアップしました。

放血用ナイフに求める条件「両刃であること」

 一口に両刃と言っても、刃のつき方でさらに細分化されるわけですけど、それはもう専門的なサイトに任せるとして、ナイフには大きく分けて両刃の物と片刃の物があります。ザックリスパスパに言うと両刃のナイフは裂くナイフ。片刃のナイフは切るナイフです。僕の行っている放血は、刺して裂く必要があるので両刃の方が向いているという訳です。かといって、片刃ではできないわけではありませんが、モノにもヒトにも向き不向きがあり、どうせやるなら向いている方でやった方がいいというだけです。

放血用ナイフに求める条件「安いこと」

 理由としましては、ナイフは消耗品ですし、安いナイフでも高いナイフでも砥げば切れますしメンテしなければ錆びます。ステンレス、鋼、ダマスカス等素材は色々ありますが、結局どのナイフも人が手を加えてこそです。今回は放血用途に限ったナイフなので、極力安いものを選んでいます。

僕が選んだ候補5選

 上記の条件には書きませんでしたが、「刃の薄さ」にも今回は着目しています。理由としては体内で刃を返すときに刀身が厚いと勝手が悪いからです。

Chonmage Fishing ハンティングナイフ

重量394g
全長19.9cm
刃渡り13.2cm
刃の厚み4mm
刃の幅4.6cm
価格2,590円

 「漢のナイフ」といった言葉が浮かびますね。持ち手は木材っぽいですが、隙間がほとんどないので衛生的ではありそうです。また約400gとかなり重めなので、腰に挿しているときにしっくりきそうですね。ここら辺は個人の好みですが、僕は腰に挿すナイフはある程度重たい方が良いと考えています。理由としましては、常にナイフの位置が意識できるため、咄嗟に抜きやすいのと、どこかで使って置きっぱなしで忘れても腰の違和感にすぐ気づくためです。

APECTY シースナイフ

重量100g
全長27cm
刃渡り14cm
刃の厚み3mm
刃の幅2.5cm
価格2,075円

 こちらのナイフの特筆すべき点は、なんといっても刃の厚さが3mmと薄いことです。さらに、全長27cmの刃渡り14cm、刃幅25mmと細くて長く、持ち手と刀身の段差も少ないため体が大きく首が太い個体でも対処しやすそうです。シース(鞘)がついているのも初めて買う人にとってはうれしいですよね(今回の5本すべてについていました)。少し軽すぎるのが玉に瑕ですが、ナイフは軽い方が良いという方もいるので人それぞれでしょう。

XHM Awesome シースナイフ

重量158g
全長24.5cm
刃渡り13cm
刃の厚み5mm
刃の幅不明
価格3,299円

 ヌルっとしたフォルムに魅力を感じピックしました。ただ刃の厚さ5mmあるのとぱっと見刃幅も広そうなので、枝打ちやバトニング向けかもしれません。持ち手に鍔がないので素手で扱うと少し危険な香りがしますね。

Wlikn キャンプナイフ

重量120g
全長22.5cm
刃渡り9.8cm
刃の厚み2.8mm
刃の幅不明
価格1,599円

 こちらのナイフは短刀チックなフォルムに魅力を感じました。刃の厚さも約3mmと薄く持ち手から刀身まで一貫して細いので放血向けな感じはします。

モーラナイフ Morakniv Companion

重量104g
全長22.4cm
刃渡り10.4cm
刃の厚み3.2mm
刃の幅不明
価格2,860円

 言わずと知れたモーラナイフです。最近はホームセンターのアウトドアコーナーとかにも並んでいるのでかなり有名になりましたよね。特筆すべき点はそのネームバリューと信頼性、そしてラバーグリップなので衛生管理がしやすい点です。ただ、刃の幅が広く刃渡りが少し短いので、オールマイティな一本としては良いですが放血用途には少し難があるかもしれません。

今回購入したのはコチラ

 今回僕が購入したのはずばり「APECTY シースナイフ」です。やはり決め手は刃渡りの長さと刃の薄さ、そして何より値段の安さです。上述の通りナイフは消耗品ですし、高くても安くても砥げば切れますしほっとけば錆びます。ステンレスなら錆びないだろうと思われるかもしれませんが、こまめに手入れしているステンレスナイフとそうでないステンレスナイフは外見や切れ味に明らかに差がでます。もちろん、高いナイフにはそれだけの価値があり、どこかしらに作り手のこだわりや使い手の望みを叶えるギミックがあります。しかしそれはまた別のお話。こだわりナイフについては僕も語りたいので、いつか読者のハンターさんとナイフについて語る会でも開きたいですね。

今まで使用していたマキリとの比較

 届いてみての第一印象は「丁度良い」です。何が丁度良いのかと言いますと、刃渡りや刃の厚さ、持った感触もそうなのですがチープな感じが丁度いいです。持ち手は刀身を樹脂製のパーツで挟んでおり、この素材感がなんとも安っぽい感じがします。いっそのこと外してしまおうかなと思ったりもしますが、まあひとまず良いでしょう。変に高級感があると使いにくいですが、チープゆえに気兼ねなく使うことが出来るのはメリットです。

シースはプラスチック製

 シースが付属していますが、これはアテにしない方が良いですね。収まりは良いですがカタカタとうるさいので、猟場で歩くときに気が散りそうです。僕はマキリをホームセンターで買った革の小物入れに入れていたので、そのまま代用しようと思います。

少しブカブカだが落ちることはなさそう

 切れ味はまあまあといったところでしょうか。この値段帯のナイフに最初から切れることは期待していないので、砥いでなんぼですね。

握ると結構しっくり来る

 結果としては良い買い物をしたと思います。2000円でこのクオリティですからすごいですよね。まだ放血には用いていませんが、その辺のインプレッションも記事にできたらと思います。皆さんのオススメナイフやこだわりナイフがありましたら、是日コメントにて教えてください。閲覧ありがとうございました。

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