今回は重たい腰を上げ双眼鏡を新調したいと思います。光学機器は出費が大きいためあまり手を付けたくはなかったのですが、猟場で獲物を判別するには必須なので新しいものを購入しようかと思います。良いものを買えば長く使えるものなので、慎重かつ大胆に?選んでいきたいと思います。
目次
初猟の反省。今の双眼鏡は何がダメ?
10月1日の初猟で、カモは居るのですが種判別ができないため撃てないというシーンがありました(初猟の反省はコチラ)。獲物は60数m先にいたので十分射程範囲内でしたし、双眼鏡でハッキリ見えてもおかしくない距離でした。
ただ、僕の双眼鏡は貰い物で「視度調整リング」という部分が壊れており調整ができません。この視度調整リングには、右目と左目の視力差を調整するという役割があり、ここを調整することでハッキリとした像を見ることが出来ます。
現在使用している双眼鏡2台
VANGUARD ENDEAVOR ED II 1042
僕が普段使用している双眼鏡2つのうち、メインで使用しているのは「ENDEAVOR ED II 1042」というVANGUARD社の双眼鏡です。上述の通り貰い物ですが決して安くはありません。公式サイトで見ると49,500円となっており、Amazonでは42,684円となっています。
倍率 | 10 |
対物レンズ有効径(mm) | 42 |
1000m先の視界(m) | 114 |
実視界 | 6.5° |
最短合焦距離(m) | 2 |
ひとみ径(mm) | 4.2 |
明るさ | 17.6 |
アイレリーフ(mm) | 18.5 |
質量(g) | 770 |
サイズ(mm) | 154×130 |
眼幅調整範囲(mm) | 58-74 |
「ENDEAVOR ED II 1042」のスペックは上記の通りです。普段双眼鏡を使わない人はよくわからない数値かもしれませんが、後述する双眼鏡を選ぶ際のポイントで詳しく解説していきたいと思います。
Nikon ACULON T01 8×21
もう1つの双眼鏡は「ACULON T01 8x21」というニコン社の双眼鏡です。こちらの双眼鏡の特筆すべき点は軽さと小ささであり、山に入る際は常に腰に装備しています。こちらも貰い物です。2013年に発売された旧製品で、当時の価格がわかりませんが、後継モデルの「ACULON T02 8x21」がAmazonで7,071円なのを見ると、おそらくその辺の価格帯だったのではないかと考えられます。
倍率 | 8 |
対物レンズ有効径(mm) | 21 |
1000m先の視界(m) | 110 |
実視界 | 6.3° |
最短合焦距離(m) | 3.0 |
ひとみ径(mm) | 2.6 |
明るさ | 6.8 |
アイレリーフ(mm) | 10.3 |
質量(g) | 195 |
サイズ(mm) | 87×104 |
眼幅調整範囲(mm) | 56-72 |
ACULON T01 8x21は質量が195gとなっています。iPhone13proが203gなのを踏まえると、いかに軽いかがわかります。ポケットに入れても全く気にならないレベルですね。
双眼鏡は何を基準に選ぶのか
では、実際に双眼鏡を購入するにあたって何を基準に選定していくのかを記述していきたいと思います。あくまで僕の基準にはなりますが、初めて双眼鏡を買うという方も少しばかりは参考になるかと思います。
倍率は何倍が必要なのか
ショッピングサイト等で双眼鏡を見ていると8×32や10×42などの記載を見かける事が多いですよね。実際商品名にそのような数値が入っているものも多いかと思います。この赤字の部分は倍率を表しています。
倍率とは簡単に言えば「肉眼より大きく見える割合」ですが、例えば倍率10倍の双眼鏡で100m先の獲物を見た場合、肉眼では100m先に獲物が見えるのに対し、双眼鏡だと10m先に獲物が見えるということになります。
現在双眼鏡の購入を検討している方は、まず肉眼で公園のカモなどを観察し、何mまでなら肉眼で種判別できるか試してみるのがいいかもしれません。10mの距離で判別できるのであれば理論上は10倍の双眼鏡で100m先の獲物まで判別できますし、5mまで近づかないと厳しいという方は10倍の双眼鏡だと50m、8倍の双眼鏡だと40m先の獲物まで判別できるということになります。
※倍率に関わらず遠方の物を見る際は後述する「視界」や「明るさ」も重要です。
実視界と見かけ視界
視界という単語を聞くとやや難しそうな印象を受けるかもしれません。僕も抵抗があるのでササッと説明したいところですが、重要なのは同じ倍率でも視界が広い方が広範囲を見ることができる。ということです。
双眼鏡のスペック欄には、「実視界」という項目が必ず入っています。この実視界に倍率をかけると「見かけ視界(旧JIS規格)」という値になります。サイトによっては望遠鏡新JIS規格を用いてる場合もありますが、旧JIS規格も望遠鏡新JIS規格もあまり大きな違いはないので僕は特に気にしていません。
ちなみに人間の肉眼の視界は両目で約120°です。ものすごく単純に考えると、片目を閉じた場合の視界は60°ということになります。つまり広角と言われるような見かけ視界65°(旧JIS規格)の双眼鏡でやっと片目分の視野が確保できるということになります。
では「双眼鏡の視界は広ければ広い方がいいのか?」と言われると一概にそうとは言い切れません。動き回る鳥を見たい場合は視界が広い方が追いやすいですし、コンサート等の一定の範囲をできるだけ広く見たい場合は視界が広い方がいいです。僕のようにピンポイントで動きが少ない対象を見たい場合は視界の広さはさして重要ではありません。
※双眼鏡に慣れていない方は、双眼鏡を覗くと対象物を見失ってしまうことが多いと思うので、できるだけ視界が広いものが良いと思います。
ひとみ径と明るさ
僕のように「遠くのカモの種判別ができない!」という方は、「ひとみ径」や「明るさ」といった要素の方が重要になってきます。ひとみ径や明るさは数値が高ければ高いほど覗いた景色が明るく見えると考えてもらって構いません。
これらの数値を計算する上で重要なのは8×32や10×42といった記載のうち青字の部分で、これを「対物レンズ有効径」といいます。
大体のカタログでひとみ径と明るさは記載されていますが、ひとみ径は対物レンズの有効径÷倍率で算出でき、明るさはひとみ径の2乗で表します。
双眼鏡を覗いて遠くが見えても、映る景色が暗いと色が認識しにくいですよね。とくにカモは色彩を基準に種の同定を行うことも多いため色が認識できるかできないかはとても重要になります。
この「双眼鏡を覗いた際の明るさ」は人間の「瞳孔径」と深くかかわっています。双眼鏡のひとみ径と人間の瞳孔径が同等の場合、双眼鏡でみた光景と裸眼で見る光景は同じ明るさで写ります。しかし、双眼鏡のひとみ径が人間の瞳孔径より小さい場合、双眼鏡で見える光景は裸眼で見るよりも暗くなってしまいます。
ここで重要なのは、人間の瞳孔は周囲の明るさによって2mm~7mmまで大きさが変化するため、昼間と早朝・夕方では双眼鏡を覗いた際の明るさが変化してしまうということです。例えば、昼間は周囲が明るいため瞳孔が3mmまで小さくなっているとします、この時ひとみ径が3mmの双眼鏡を覗くと、裸眼と変わらず景色は明るく見えます。しかし、夕方になり周囲が薄暗くなると瞳孔が6mmまで開き、同じひとみ径3mmの双眼鏡を覗いても、見える景色は昼間より大幅に暗くなってしまうのです。
視界の明るさを確保するためには、ひとみ径が大きい双眼鏡を選ぶのが望ましいということになります。
質量や大きさと価格は反比例する
双眼鏡の質量(重さ)は、概ね価格と反比例します。同じ倍率かつ同じ対物レンズ径の場合、重たくて大きいほど値段は安く、軽くて小さいほど値段は高いです。
何を目的に双眼鏡を使うかによりますが、僕の場合は猟場を歩き回るので1kgを超えてくると首がキツくなってしまいます。反対に、ブラインドや小屋からカモが来るのを待つ待ち猟なら三脚にでも双眼鏡を付けておけばいいので重たくて大きいものでも良いのかもしれません。
超えられない予算の壁
これまでいくつか選定基準を挙げてきましたが、やはり予算の範囲内で購入するとなるとどこかに妥協点を見出さなければなりません。一般的に対物レンズ径やひとみ径は大きいほど価格が高く、質量は軽いほど高価になります。クリアなレンズや色彩がはっきりしているレンズなど、レンズの種類によっても価格は変動します。
予算5万円で選んだ候補
僕が今回買い替える双眼鏡に重視する要素は以下の3点です。これらの要素を基準に予算5万円の範囲内で良さそうな双眼鏡をピックアップしてみました。
- 倍率が高いこと(現在が10倍)
- 視界が明るい事こと(ひとみ径が大きい事)
- 1kgを超えないこと
候補1.Kowa SVⅡ 50-12
Kowa社から出ているSVⅡシリーズです。鳥類調査等を行っている知人によると同社のBDⅡシリーズもおすすめだそうです。
候補2.Kenko ultraVIEW EX 12×50 DH
Kenko社から出ているultra VIEWシリーズです。身近にケンコーの双眼鏡を使っている人がいないので未知数ですが、双眼鏡のラインナップが多く選択肢が豊富です。
候補3.Nikon MONARCH 5 16x56
言わずと知れたニコンのMONARCHシリーズの双眼鏡です。僕はクリスマスに親しい人へMONARCH 7をプレゼントしたことがありますが、流石ニコンと言いますか、視界がクリアで対象の色彩がハッキリしており格の違いのようなものを感じました。
各候補のスペックを比較
VANGUARD ENDEAVOR ED II 1042 | Kowa SVⅡ 50-12 | Kenko ultraVIEW EX 12×50 DH | Nikon MONARCH 5 16x56 | |
倍率 | 10 | 12 | 12 | 16 |
対物レンズ有効径 (mm) | 42 | 50 | 50 | 56 |
実視界 | 6.5° | 4.8° | 5.0° | 4.1° |
ひとみ径 (mm) | 4.2 | 4.2 | 4.2 | 3.5 |
明るさ | 17.6 | 17.6 | 17.6 | 12.3 |
質量(g) | 770 | 745 | 810 | 1230 |
価格(税別) | 49,500円 | 46,000円 | 47,000円 | 61,380円 |
僕がもともと使っていたENDEAVOR ED II 1042を加えて比較してみました。MONARCH 5は確かに魅力的ですがひとみ径が小さく薄明薄暮な状況ではしっかり見えなさそうですね。質量も1230gと持ち歩くには重たいです。ultraVIEWも悪くはないのですが、既に生産を終了しているようで購入が難しそうでした。Kowa社のSVⅡシリーズは実視界がやや狭いですが745gと最も軽く価格も安いためコストパフォーマンスに優れそうです。
購入するのは
ということで、KowaのSVⅡシリーズを購入しようかと思います。Kowa社の双眼鏡の評判は結構聞いていたので実物が届くのが楽しみです。ちょうど現在使用しているENDEAVOR ED II 1042と倍率・視野以外のスペックが似通っているので、実機のレビューに合わせてそのあたりの比較も行えたらと思います。